【STトピック】訪問看護セラピスト直撃取材①

~訪問STを目指すなら、読んでおきたい現場のホンネ~

今回のゲスト
ソフィアメディ株式会社
ソフィア訪問看護ステーション豊町分室青物横丁
言語聴覚士 服部 慎吾
http://www.sophiamedi.co.jp/office/station-yutakacho-bunshitsu-aomonoyokocho

インタビュアー
一般社団法人 訪問看護エデュケーションパーラー 中村若菜 / 金杉優衣
http://www.hokan-e-parlor.com/
取材日:2017年12月18日

ソフィアメディの訪問セラピスト直撃取材、第2回目はなんと、訪問STさんです!在宅で活躍する言語聴覚士さんはまだまだ少ない状況ですが…今回お話を伺ったのは、ソフィア訪問看護ステーション豊町分室青物横丁所属の服部慎吾さん、2017年4月にソフィアメディ株式会社に入職され、地域の訪問言語聴覚士として活躍しています。入職から9か月が経過して、「訪問リハビリテーションの現場に出て思うこと、感じること」を聞いてみました。

<訪問=〇〇だと思ってました>
―今回は、取材を快諾してくださりありがとうございます。
服部 こちらこそ貴重な機会をありがとうございます。お手柔らかにお願いしますね(笑)

―はい、お手柔らかにいろいろと伺います(笑) 今年4月入職と伺いましたが、それ以前はどちらでご経験を積まれたのでしょうか?
服部 最初に回復期病院、次に急性期の総合病院ですね。STとしては今年で9年目になります。

―そうですか、では、色々ご経験されてきた中で、どのようなきっかけで訪問看護の世界へ?
服部 正直このように訪問に携わることになるとは思っていませんでした。前職中に地域包括ケア病棟が立ち上がり、それまでほとんど交流がなかったケアマネジャーさんやご家族と接する機会が増えました。そこで、それまで病院で自分が行ってきたリハビリテーションがしっかり自宅で活かされているのかな?という疑問を感じるようになりました。

―それなら、ご自身で確かめてみようかと?
服部 そうなんです。前職の病院には訪問部門もありましたので、何となくのイメージは持っていたということもあります。

―ある程度思い描いた上で入職された、ということなんですね。ちなみに、どういったイメージをお持ちでしたか?
服部 例えば、病院では、周囲に専門職がたくさんいますが、訪問では、側に自分以外の専門職が誰もいない状況になることもあります。そういった環境の中で様々なリスクと向き合わなければならない、負わなければならない、というプレッシャーがあること、ですかね。訪問部門の方たちから話を聞く中で、何となくそんなイメージを持っていました。ただそれは、デメリットというわけではなくて、言語聴覚士であっても時に身体的・看護的対応を求められるということで、お客様に総合的な視点で関われるという意味では新鮮で勉強になると思っていました。

―確かに。実際にご自宅に訪問すると、病院がいかに専門職が多く、行き届いた環境だったのか思い知らされますよね。
服部 はい。やっぱりご家族もご本人も、医療の知識がない方が多いので…そこの責任は自分が負っているんだ、と。今までDr.が側にいた環境とはやっぱり違いますね。

―では逆に、イメージしていなかったこと、想定外だった、ということはありますか?
服部 そうですね、意外と皆さん早くご自宅に戻られているんだな、と思いました。「訪問=維持期」のイメージがありましたが、必ずしもそうではないんだ、という。もちろん、話を伺うといろいろ事情があるようですが。

―なるほど。治療が終わり次第自宅退院、というケースが意外と多い、と。
服部 そうなんです。ですから、STとしてまだまだ回復の余地があるぞ、という方に出会う機会も多いです。

―やはりお客様が回復していく様子を見るのは、嬉しいですよね。
服部 そうですね、それももちろんですし、あとはやっぱり、長くお客様と関わっていけるということでしょうか。病院では、在院日数を過ぎてしまうと退院、基本的には入院中だけの関わりでしたから。

―そうですか。在宅医療の現場で、ご自宅で過ごすお客様と向かい合う中で、嬉しいことや戸惑うこともあると思いますが、いかがですか?
服部 今は…そうですね、楽しさと困惑、半々くらいな気がします。お客様にとってご自宅はやっぱり、落ち着ける、くつろげる場所なので、「病院では(リハビリテーションを)頑張ったけど、家ではそこまで頑張る必要なし」と考えているお客様もいらっしゃるので。その気持ちを尊重したい、お客様本位であるべきだ、と分かってはいるんですけれど、もう少し頑張れば回復する余地があるのにな、と思う自分もいて、どこまで自分の主張を押すべきか葛藤があります。

<食べること、喋ること、あなたにとって大切なのは?>
―「家ではそこまで頑張る必要なし」というのはどういう意味なのでしょうか?
服部 そうですね…うまく伝わるかわかりませんが…、在宅医療では、ご本人のご希望だけではなく、ご家族やケアマネジャーさん、主治医…その方たちからの要望も踏まえてリハビリテーション指示が出ることも多いんです。例えば食事については「口から食べたい」、「せっかく食べるなら美味しいものを」とほとんどの方が希望されますが、喋ることに関しては「喋れなくてもどうにかなる」と考える方もいらっしゃるんですよね。

―つまり、リハビリテーションを開始する時点で、取り組みに対する意識に差が出てしまうと?
服部 そうです。言葉って、人生経験や職歴や価値観が反映されると思うので、会話をどの程度重要と捉えるか、必要性を感じるかは人それぞれなので。ですから「病院では頑張ったけど家では…」と考える方もいるのだと思います。

―そうですか。そうすると、「リハビリテーションしましょう」と伝えることより「どう意欲を引き出していくか」を考えてアプローチすることが最初は重要だということですか?
服部 おっしゃる通りです。そのためには、(STという)自分を受け入れてもらうための信頼関係づくりが大切だと思っています。

―信頼関係を築いていくことが大切なのは、病院でも在宅でも変わらないですよね。「食べること」と「喋ること」のリハビリテーションではどちらが困難なケースにあたることが多いのでしょうか?
服部 いえ、それは…どちらかと言えば、嚥下のリハビリテーションの方が、特にリスク管理の面で難しさを感じることのほうが多いですね。

―リスク管理、というと、誤嚥など、ということでしょうか?
服部 そうですね。「喋る」ことが生命の危険につながることはほとんどないと思いますが、食べることは一歩間違えればその危険に直結してしまいますので…。例えば、ご本人が食べたい食事があったとして、でもそれは私から見ると正直無謀と思える目標だな、と感じることもあります。でも、ご家族が「本人が食べたいと思っているから、だから食べさせている」ということも結構あります。

―「えっ、それ食べれるの?」というようなものであってもですか?
服部 そうです、召し上がっているんですよね…。そういった話を、訪問の際にご家族から不意に伺うこともあります。病院では、Dr.はもちろん、管理栄養士や看護師といった専門職同士が協力し、徹底的にリスク管理された状況下で、朝昼晩の三食を管理して、例えばどの程度のとろみを使うかといった内容の検討をしていきます。しかし在宅医療では、その多くは週に1度の介入で、ご本人のお食事の調理や介助はご家族がされますが、そのご家族が、嚥下に対してどの程度の知識を持っているのか、どの程度の介助をされているのか、というのは非常に測りづらいです。

―毎日伺って、調理場面を都度拝見して、というわけにもいかないですものね…
服部 はい(苦笑)。私は、嚥下に関しては、ご本人だけではなく、ご家族の意向も強く反映されると思っていて、先ほどお話した通りどんなに誤嚥リスクが高くても、ご本人の希望通りに食べさせているご家族もいらっしゃいます。そういった場合にそういう時に主治医から嚥下に関してご家族にもしっかり説明がされていると、とても安心します。

―水戸黄門の印籠のような(笑)
服部 はい、そうですね(笑)。嚥下のリハビリテーションは、全身状態にかかるリスクがとても高く、Dr.からの細かい指示は非常に重要だと思っています。Dr.との連携をいかにしていくか、そのために他職種といかに密なやり取りをしていくか…。少しでも迷ったらホウレンソウして、一人で抱え込まないようにして、時には私では言いづらいことを他の方がDr.に伝えてくれたり、ということもありました。

<訪問STとして、ひとりの人間として>
―今後、在宅医療という現場でお客様に寄り添っていく中で、大切にしているのはどのようなことですか?
服部 そうですね…「ご本人、ご家族が納得し、後悔しない人生を送るための意思決定を尊重する」ことを軸にすること、でしょうか。そして医療者としての線引きをしていくことが大事だと思います。人によっては、私のこの考え方を「守りの姿勢」と感じる方もいるかもしれないですけど…。

―守りの姿勢、とは…?
服部 あぁ、線引きをすることを、専門職として必要なことはしているけど、どこかで相手のことを1番に考えていない、と感じる人もいるかもしれないな、と思ってます。でも、これは死のリスクと隣り合わせの仕事なので、そこは分けて、どこかで線引きをしないと、…専門職としてのけじめと言いますか。

―なるほど、それで守り、という表現を使われたんですね。伺っているとむしろいかにギリギリを攻め込むか、という表現にも思えましたが。
服部 そうですか?(笑)

―はい(笑)。では最後に、これからも地域医療に関わっていく上で、やってみたいこと、挑戦してみたいことなどあれば教えてください。
服部 機会があればケアマネジャーさん向けの勉強会などをさせていただきたいと思っています。テーマにこだわりはありませんが…敢えて言えば「嚥下」でしょうか。やはり地域医療の中で嚥下についての需要は高いと感じます。

―なるほど、では、それが新年の抱負ということでひとつ。
服部 いや、どうでしょう、やれたらいいな、くらいですけれど(笑)

―ぜひお願いいたします!(笑)本日はどうも、ありがとうございました。
服部:こちらこそ、ありがとうございました。

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取材後に、服部STより、訪問STを目指している方へ、STとして訪問に出て感じていること、のメッセージをいただいたので以下に記します。

訪問言語聴覚士は、病院で働く言語聴覚士と違い、身近に同業の言語聴覚士がいない場合が多く、専門分野の相談がすぐに出来ない・好ましくない考え方や訓練がなされていても指摘される機会が少ないという環境に置かれています。訪問言語聴覚士としての活躍を希望される方は、まずは病院で、言語聴覚士としての専門性や考え方、そして「社会人としての基礎力」を身に付けてから転職されることをお勧めします。

<取材後記>
今回の取材を通し、服部STが『線引きは大事』だと繰り返し仰っていたのが印象的でした。「食事」という人間の本能的欲求の質を高めつつ、死の危険と隣り合うことのないよういかに網を張るか…、言語聴覚士としてのプロ意識でおひとりおひとりに接しているのだと感じました。また、「食事」という言語聴覚士ならではの分野について服部STの考えを伺ったことで、普段何気なく行っている「食」についての自分自身にとっての意味、何のために食べるのか、食事が自分に与えてくれる楽しみや喜びについて考えるきっかけにもなりました。
(文筆:作業療法士・中村若菜)